4.29 リン吸着剤(炭酸ランタン)

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4.29 リン吸着剤(炭酸ランタン)

炭酸ランタン(商品名:ホスレノール錠)は、塩酸セベラマーと同様、カルシウムを含まないリン酸吸着剤である。炭酸ランタンは塩酸セベラマーよりもリン吸着作用が強く、かつ便秘を合併する頻度が低い。しかし、微量のランタンが骨、消化管および肝臓に蓄積するとの報告がある。
作用機序
食物に含まれるリン酸と炭酸ランタンを構成するランタンが胃の中で結合して、不溶性のリン酸ランタンが生成される。このようにして生成されたリン酸ランタンは解離することなく便中に排泄される。結果として、炭酸ランタンの服用により消化管からのリンの吸収が阻害される。
服用したランタンはこのように不溶性のリン酸ランタンとして糞便中に排泄されるため、消化管から吸収されるランタン量は極わずかである。そして、吸収されたランタンも主として胆汁を介して便中に排泄される。しかし、それでもなお、長期の炭酸ランタンの服用により、骨、消化管および肝臓にはランタンが蓄積する。
 
炭酸ランタン
  ホスレノール250mg,500mg
   (バイエル)

塩酸セベラマー
  フォスブロック錠250mg
   (キリン)
  レナジェル錠250mg
   (中外)
炭酸カルシウム
  炭カル(旭化成)
  カルタン(メルク・ホエイ)

吸着能の比較
炭酸ランタンは、胃内pHにかかわらず高いリン除去効果を示す。これに対し、炭酸カルシウムのリン除去効果は胃内pHが高くなるにしたがって(アルカリ性になるにしたがって)低下していく。したがって、ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬などの胃内pHを高く保つ薬剤を投与している場合であっても、炭酸ランタンは高いリン除去効果を維持する。
炭酸ランタン1,500mg/日の血清リン低下効果は、炭酸カルシウム(薬)3,000mg/日の血清リン低下効果におおよそ等しい。
 
 
用法及び用量
投与開始時には1日3回、1回250mgを食直後に経口投与する。
その後、症状、血清リン濃度をみながら投与量を増減する。投与量の上限は1日2,250mgとする。投与量を増やす場合には1週間以上の間隔をあけて、増加量は1日あたり750mg以下とする。
炭酸ランタンは胃の中で溶けにくい。そこで、炭酸ランタンの錠剤は飲み込む前に口の中で十分に噛み砕く。その後、唾液あるいは少量の水で飲み込む。
炭酸ランタンの投与を開始した場合、あるいは投与量を変更した場合には、1週間後を目安に血清リン濃度の変化を調べるのが望ましい。製薬会社の能書には、炭酸ランタンの投与後2週間が経過しても効果が認められない場合には、他の治療法に切り替えるよう指示されている。
 
 
副作用
承認時における国内の臨床試験では26.9%に副作用が認められている。具体的には、12.5%の患者に嘔吐、10.2%に悪心、3%に胃不快感が認められている。便秘は2.3%の患者に認められたにすぎない。
 
 

ヒスタミンH2ブロッカー≫
ファモチジン
  ガスター(アステラス)
ニザチジン  アシノン(ゼリア)
 
≪プロトンポンプ阻害薬≫

ランソプラゾール

  タケプロン(武田)
オメプラゾール  オメプラール(アストラ)
  オメプラゾン(吉冨)
ラベプラゾール
  パリエット(エーザイ)

投与にあたっての注意
1) 重度の肝機能障害を有する患者では、炭酸ランタンの投与は慎重におこなう。重度の肝機能障害では胆汁排泄が低下しており、ランタンは主に胆汁中に排泄されるからである。
2) 活動性消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管狭窄のある患者では、炭酸ランタンの投与は慎重におこなう。炭酸ランタンの主な副作用が消化器症状であることによる。
3) テトラサイクリン系抗生物質(塩酸ミノサイクリン(薬)、塩酸ドキシサイクリン(薬)等)、ニューキノロン系抗菌剤(レボフロキサシン(薬)等)と炭酸ランタンとを同時に服用すると、これらの抗生物質あるいは抗菌剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがある。これを防ぐため、これらの薬剤は炭酸ランタンの服用後2時間以上が経過してから服用する。
これは、これらの抗生物質あるいは抗菌剤とランタンとが不溶性の複合体を形成して、テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌剤の腸管からの吸収が妨げられることによる。
4) 炭酸ランタンを服用している患者の腹部X線写真には、ランタンが存在する胃腸管にバリウム様の陰影が認められることがある。

塩酸ミノサイクリン
  ミノマイシン(武田)
塩酸ドキシサイクリン
  ヒブラマイシン
   (ファイザー)
レボフロキサシン
  クラビット(第一三共)



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