4.20 L-カルニチン欠乏

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4.20 L-カルニチン欠乏
L-カルニチンは、肝臓と腎臓で産生されて血液中に放出され、またL-カルニチンを多く含む肉の摂取にともなって腸管から血液中に吸収される。
このように、L-カルニチンは、主に肝臓で、次いで腎臓でも産生されるが、実際にはリジンとメチオニンを材料にして産生されたトリメチルリジンから、腎臓でL-カルニチンの原材料であるブチロベタインが産生され、これが血流に乗って肝臓に到達し、肝臓におけるL-カルニチンの産生に用いられるのである[1]。したがって、透析患者では、腎臓だけでなく肝臓におけるL-カルニチン産生も減少している可能性がある。
また、透析患者では、しばしば食事制限や食欲不振のためL-カルニチンそのものや原料であるリジンとメチオニンの摂取量が減少している。表には、代表的な食材のL-カルニチン含有量を示す[2]。
以上のように、透析患者では、L-カルニチンの産生が減少しており、またしばしば、食事制限や食欲不振のためL-カルニチンそのものや原料であるリジンとメチオニンの摂取が減少している。さらに、これらに加えて、透析患者では一回の透析で血漿中のL-カルニチンの70〜80%が除去される。そこで、多くの透析患者では体内のL-カルニチン量が不足していると思われる。実際、多くの報告を整理すると[3,4]、日本の透析患者のL-カルニチン濃度は、健常人の60%程度にすぎないようである。
透析患者にしばしば認められる不整脈、心肥大、倦怠感の一部には、このような体内のL-カルニチン量の不足が関係している可能性がある。すなわち、L-カルニチン不足のため、心筋細胞や骨格筋細胞では脂肪酸がエネルギー源として利用されず、そのために、あるいは細胞質に蓄積した脂肪酸によるエネルギー産生の障害のために、不整脈、心肥大、倦怠感が生じる可能性がある。
 
食品中のL-カルニチン含有量
食品名100g当たりのカルニチン含有量
牛肉(テンダロイン)59.8 mg
牛肉(  肩  )67.4 mg
牛肉(  臀部  )61.6 mg
羊肉208.9 mg
鶏肉4.55〜9.10 mg
牛乳1.9 mg
鶏卵0.8 mg
パン0.2 mg
 
 
 
文献
1.      Carter A, et al.: The role of the kidney in the biosysthesis of carnitine in the rat. J Biol Chem. 254: 10670-10674, 1979.
2.      前田憲志:カルニチンの生理的意義. 臨床透析. 16: 159-165, 2000.
3.      Rössle C, et al.: An improved method for the determination of free and esterified carnitine. Clin Chim Axta. 149: 263-268, 1985.
4.     松本芳博、他:透析患者のカルニチン欠乏. 現代医学. 35: 431-438, 1998.


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